6月23日・24日-あの子と付き合ってから初めてのデート。

僕は、あの子の彼氏になった。

大好きなあの子と付き合えたのはすごくうれしかったが、付き合って数日の間は、飽きられたり嫌われたりしてすぐに振られたらどうしようとかそんな不安な気持ちでいっぱいだった。

 

でも、無事に、会う予定の日が近づいてきて、その日が近づくにつれ、僕は幸せを噛みしめていた。

 

ただ、会うまでに、いろいろ起きた。

もっとも大きなことは、6月18日に起きた大阪の地震だった。

あの子は無事だったから本当に安心したが、僕はかなりビビって大阪に行くのが怖くなってしまっていた。

 

直前までやっとあと数日で会えるねと楽しみにしていたのに、怖くなってしまっていた。ハッキリ言って絶望だった。

 

あの子にそれを伝えると、あの子はかなり怒った。当然だ。もう収まりかけているのに、地震が怖いから会えないなんて言われたら、そりゃ怒る。

 

それに、あの子はあまり学校が好きではなくて、毎日つらい思いの中、僕と会うのを楽しみに頑張っていた。だから、なおさらつらかったのだろう。

 

それでも、それでも僕は、どうしても、「行く」とは言えなかった。

あの子は怒って、「もう夏休みまで会わない。もう今回の話は忘れよ。どうせ会わないんだから意味ないんじゃん」とぶっきらぼうに言ってきた。

 

でも、僕は会いたかった。どうすればいいんだろう。

絞り出した答えは「こっちに来て」だった。

 

今思っても、本当に、クズだと思う。

自分は行くのが怖いから相手に僕が住んでいる名古屋に来てとお願いしたのだ。

また、大きな地震が起きるかもしれないのに、家族を置いて大阪を離れて僕のところに来てとお願いしたのだ。

 

書いていても、自責の念に駆られる。

 

 

 

それなのに、あの子は名古屋に来るという決断をしてくれた。

 

 

 

本当に、ありがとう。

今でもあの子の、この選択に感謝してもしきれない思いだ。

 

ーー

僕の彼女が、新幹線に乗って、名古屋へやってきた。

名古屋で見る彼女は格別だった。

普段ならいつも通りの名古屋駅が、彼女のおかげで輝いて見えた。

本当に、本当にかわいくてたまらなかった。

 

僕らはまず、デニーズに向かった。

なぜデニーズか。理由は簡単だ。

クオカードが使えるからだ。

僕は諸事情により、クオカードを数万円分持っている。

そのクオカードで気分よく彼女にお昼ごはんを奢ってあげられる。

 

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ーー

記憶とは不思議なもので、より前のことである大阪での思い出はいくらでも思い出せるのに、名古屋でのことはあまり鮮明に思い出せない。

 

覚えているのは、雨の中、名古屋市科学館に行ったことだ。

あとは、名古屋市科学館がある白川公園をみて「名古屋、いなかやなぁ~~~」を大声で言っていたことくらいだ。

 

もちろん、冗談で言っているのだと思っている。だって、名古屋は大大大大大都会なんだから。

 

でも、そんなことをふざけて言う元気な彼女が、かわいくて、また好きになった。

 

ーー

名古屋市科学館に行った後、宿泊予定のホテルまで地味に時間が余ってしまった。

どうしようと迷っていると「どーするか、考えてください」と言ってくる彼女がとても可愛く感じた。なんというか僕に全面的に任せてくる感じが、幼げで可愛かったのだ。

 

結局僕らは、カラオケに行くことにした。

はじめて会ったときぶりに、カラオケに行った。

あの時、彼女は小声で少し歌を歌う程度だった。

でも、あれは、偽りの姿だった。

 

彼女は、そもそもいい声をしていた。

少し鼻にかかった高い声で、ミスチルの桜井さんのような電子音が混ざったような聞き心地の良い声。さらにかなりの声量もあった。

 

だから、本領を発揮した彼女の歌は、格別だった。ピアノを習っていたことも影響しているのか音の取り方も見事で、耳が気持ちよくてずっと聞いていたいと思った。

 

これは、彼女のことが好きだからとかは関係なく、本当に、僕は彼女の歌声が好きで、きっと彼女の一番のファンだと思う。

 

ーー

カラオケを出て、宿泊予定のホテルへと向かった。駅から結構遠いし、予約できない人気のホテルだから、宿泊可能時刻ちょっと前には着くようにしたいと思っていた。

 

それなのに、なんだかんだで、ギリギリになってしまった。

 

道中、「ねぇ~まだぁ?」といじらしく聞いてくる彼女に愛しさを感じながら、早歩きで歩いていると、やっとホテルが見えてきた。

 

ーー

残り1室というギリギリのギリギリで、なんとか部屋を取ることが出来た。

彼女もきれいな部屋に喜んでくれてすごくうれしかった。

ちょっとしてから一旦ホテルを出て、お決まりのコンビニ夜ご飯を買いに行った。

 

僕は、こういうところにすごく幸せを感じるので、ホテルから出て、コンビニに手を繋ぎながら向かう道が、本当に幸せだった。

 

ーー

デート中だというのに、彼女は納豆巻きなんかを買った。こういう純粋なところが、大好きなんだけどね。

 

僕は、はじめて彼女と会った日の夜に家でバカ食いした以来好きになった焼き豚の弁当と、カレーを買った。

 

運がいいことに、この日はエンタの神様スペシャルがやっていた。

大好きな人とご飯を食べながら見るお笑い番組は、格別だった。

 

ーー

翌朝。

朝日を背に化粧している彼女が美しくて、一眼レフで写真をたくさん写真を撮った。

おだんごヘアーがうまく決まらなくて手伝ってあげたら上手にできてうれしかった。

なんか、付き合ってるって感じがした。

 

この日に何をしたかはあまり覚えていない。

ただ、暑い中、栄にいるとき話の流れで僕の部屋に来ることになって、

汚すぎるレベルの僕の部屋に招待したことは鮮明に覚えている。

 

あんな汚い部屋を見ても、僕のことを嫌いにならないなんて、どんだけ僕のこと好きなんだと、すこし勘違い男になってしまうところだった。

 

そろそろバイバイの時間が迫ってきているというのに、眠くなっちゃったのか、彼女は、僕のベッドでスヤスヤと眠り始めてしまった。

 

ハッと目を覚ました彼女は甘い声で、「ごめん。もうすぐバイバイなのに寝ちゃった。本当にごめん」と謝ってきた。

 

か、かわいい。ひたすらかわいい、そう思った。

そもそもスヤスヤ寝ている彼女が可愛くて、僕は動画を撮っていたのだ。

むしろ、僕にとって、ご褒美みたいな時間だった。

 

ーー

楽しかったデートももう終わりだ。

僕は自分の家からあの子を名古屋駅まで見送ってバイバイした。

バイバイがさみしすぎて、どんよりした気持ちで自分の家に帰ったことを覚えている。